聞いていて、ぞっとした。あんな男がとんでもない数の(約6000発?)核兵器のボタンを握っているこの世界そのものが、危険きわまりないものだということだ。
しかし、プーチンが絶望にかられるのはいつか?どんなことをブレマー氏は懸念しているのか?
ブレマー氏は「ウクライナが勝利できると多くの人々が思い始めているが、それは危険だ」と言った。ウクライナを勝たせるために欧米が軍事支援を続ける先に、ロシアと欧米との対決という事態が露骨なまでに表面化し、そこから追い込まれたロシアによる核攻撃にまで発展しかねない、というのがブレマー氏の懸念である。
つまり、追い込みすぎないうちに、和平交渉をまとめないと、世界の破局が心配だということである。スティンガーやジャベリン、スイッチブレードなど歩兵が操る米国製兵器の威力もあって善戦しているウクライナだが、軍事的勝利ばかりを追求すると、その先に思わぬ悲劇が待っている。どこかで和平の道をさぐり、プーチン体制の崩壊まで我慢するという戦略も必要になってくるのだろうか。
世界秩序への影響という点では、ブレマー氏は、「平和の配当の終わり」という言葉で表現していた。欧州各国は今後、安全保障にこれまでよりも多くの資金を振り向けざるを得なくなった、ということである。「平和の配当」とは、懐かしい。冷戦終結で、各国が軍事費を経済発展などに回せるようになったこと。それが全面的に逆流してしまうほどの事態になるのか。