貧困の悲しさと人間の尊さー是枝監督『万引き家族』の価値を実感
カンヌ国際映画祭で最優秀作品賞のパルムドールを受賞した是枝和弘監督の『万引き家族』をフジテレビが放映したのは7月だった。録画をそのままにしていたが、やっと見る機会があり、あまりのリアリティーに涙が出そうになった。
貧しさが人間をダメにしてゆく。でも、そのなかで、ぎりぎりのところで出会いながら思いやりを失わずに生きてゆく疑似家族。
本当の家族ではないという負い目や悲しさ、苦しさもある。でも、本当の家族に捨てられた子どもを、家族以上に大切にする優しさ、心の美しさもある。本当の家族以上に見える場面は、家族について観るものに反省を迫る力がある。
ラストは悲しい。家族がバラバラになる。でもそれは、子どもの成長に起因している。悪いことを「とうちゃん」にも「いもうと」にもさせたくない…
その成長が、暗い映画に一筋の光を投げている。
こうした貧困映画を、保守派の人々は見たくないようだ。だから監督にも作品にも冷たい。テレビだってそうだ。そんななかで放送したフジテレビには、ちゃんとした人材もいるのだと知ることができた。
こういう重たい現実を避けているテレビ。ジャニーズやお笑いで視聴率を…
それはお金本位で毒が回った姿である。新聞だって、笑えない。
こういう作品の良さに接することで、人間が少しはまともになる可能性があると信じたい。