子どもが行方不明!もう会えない!線路わきを走り回った日…
今週のお題「怖い話」
「買い物から帰ったら、子どもがいない」。妻からの電話をもらったときは、「家の近くで遊んでいるんだろ」「もう一度さがしてみたら」と言ったものの、気になって仕事が手につかなくなってしまった。
しばらくして、妻に電話してみた。「どうにも見つからない」と妻も焦っている。こどもが熱っぽかったので、いつもなら買い物に連れて行くところを、家に残して近くのスーパーへ買い物に行き、約1時間後に帰ったら、姿がないのだという。私ももう不安でたまらず、「仕事を切り上げて帰るよ」と言うしかなかった。
帰ってみると、やはりいない。まだ3歳だから、そんなに遠くへいくはずがない。それに熱っぽかったし、いつも母親の言うことを聞いていた。無茶な行動はできるはずがない…なのに見当たらないなんて、ありえない…
いやなことを考え始めた。事故?誘拐?-まさか…!
遊んでいるうちに誘拐された?いや、うちは狙われるような存在ではない。だけど…子供が欲しい人なら、だれでもいいと考えるかも…
事故?交通事故なら近くに踏み切りがある。そこから軌道敷に入って、もしかしたら…と線路わきの道路を走りながらひとしきり探してみた。それでも見つからない。
警察に届けがあるかも…家に一番近い交番に行ってみた。あれこれ聞かれた。本署にも問い合わせてもらったが、いまのところは子供の事故などは報告されていないというので、少しだけほっとした。
だが、またしても、いやな予感が頭をもたげてきた…誘拐かな…
ほどなく妻から電話が入った。「いたわよ」。落ち着いた声に、なんだか拍子抜けしたが、安ど感とともに、どっと疲れを感じた。5時間くらいの緊張だった。
まだ小さいので自分から外出することはないという前提だったのだが、それを取り払って、妻が近所の知り合いを訪ねたところ、そこにいたんだとか。あああああああああ、こどもも、だんだん大きくなって行動半径が広がっていたんだね。
こんな思いは二度としたくないと思ったあの日。子供があれほどいとおしく思えたことはなかった。夕陽があんなに美しいと思った日もなかった。