キッシンジャーの訴え「冷戦の麓」とは?
このままでは冷戦になってしまう危険がかなりある、といいたいのだろうが、ではそれを避けるために、どうすればいいのかをキッシンジャーはどう語ったのか?
中国にとって彼は「古い友人」であり、「井戸を掘った」つまり中国に貢献してくれた恩人という存在だ。ニクソン訪中、米中国交回復の立役者である。
以下はブルームバーグの記事の一節だ。
当時の密談で彼は周恩来に日米安保は日本の軍国主義復活を防ぐ防波堤だと説明した。この意味で米中は手を握っていたともいえる。
だがそれは、中国がアメリカの利益にますます貢献してゆくという楽観的シナリオに基づくものであった。それが一変し、アメリカにとって中国が覇権を争うライバルとなった。昨年10月のペンス副大統領のワシントン演説は、米政府が中国の覇権掌握を阻止するという姿勢を鮮明にした。
その姿勢はなにも共和党関係者に限った警戒心ではなく、民主党関係者の間でも共有され、いわば超党派のコンセンサスになりつつあるのだと、メディアは解説している。
だけど、ほんとにそうなのか?…そうだとすれば、もはや米中に妥協や協調の余地はないのか?
キッシンジャーはこれについて、どういう歴史観、戦略論を持っているのか。覇権は争うものではなく、分かち合うことができるとでもいうのだろうか?それは中国の言いたいことと重なる。だがそのためには?アメリカが度量を示して双方の利益にかなう道を見出せなくてはならない。そんなことができるのだろうか?
中国側からすれば、天下三分の計みたいなことを考えているのかもしれない。歴史に学ぶとそういうことかもしれないが、かえって罠にはまらないかどうか…
もろもろのことを踏まえて、キッシンジャーはきっと、米中の大衆が冷戦モードにはまってしまわないように、双方の政府が努力せよと言いたかったのかもしれない。だから、まだ間に合う。冷戦の麓であって、頂上に近づいているのではないから、と。